2015.3.6公開
最高裁判所は,本年2月18日,結婚する際の夫婦同姓を定める民法の規定及び女性の再婚禁止期間を定める民法の規定が憲法に違反するかどうかが争われた事件について,15名の裁判官による大法廷で審理することを決めました。
今後,これらの民法の規定が憲法に違反するかどうかについて,最高裁判所が判断するものと考えられますが,まずは現行の民法の規定を見てみましょう。
1 結婚する際の夫婦同姓を定めた民法の規定について
民法750条では「夫婦は,婚姻の際に定めるところに従い,夫又は妻の氏を称する」と規定されています。
この規定により,夫婦は,結婚する際に,どちらか一方の氏(姓)を選択しなければならず,いわゆる「夫婦別姓」は認められていません。
2 女性の再婚禁止期間を定めた民法の規定について
民法733条1項では「女は,前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ,再婚をすることができない」と規定されています。
この規定により,女性は,離婚後一定期間,再婚できないことになります。
他方,男性については,このような規定がないため,離婚後直ちに再婚することができます。
3 両裁判における原告側の主張
⑴ 前記1の民法の規定に関する裁判では,原告側は「夫婦の一方に対して婚姻前の氏の変更を強制する民法750条は,憲法13条によって保障されている『氏の変更を強制されない権利』及び憲法24条によって保障されている『婚姻の自由』を侵害している」と主張しています。
この民法の規定をめぐっては,法制審議会が平成8年に「選択的夫婦別姓制度」の導入を提言していますが,「家族の一体感や絆が弱まる」と言った反対意見も根強く,今も実現していません。
⑵ また,前記2の民法の規定に関する裁判では,原告側は「女性にだけ再婚禁止期間を設けている民法733条1項は,憲法14条1項が定める『法の下の平等』に違反するとともに,憲法24条2項が定める『両性の本質的平等』に違反している」と主張しています。
この民法の規定については,過去にも同様の裁判がありましたが,最高裁判所は,平成7年,「父性の推定の重複を回避し,父子関係をめぐる紛争の予防を目的とする以上,憲法14条1項に違反しない」として,合憲と判断しています。
なお,法制審議会は平成8年に「女性の再婚禁止期間は100日に短縮すべき」と提言していますが,こちらも実現していません。
4 今後の行方
どちらの裁判も,第1審・控訴審ともに,これらの民法の規定は憲法に違反しないと判断して原告側の請求を棄却したため,原告側が最高裁判所に上告したものです。
今後,最高裁判所はこれらの民法の規定が憲法に違反するかどうかを判断するものと考えられますが,夫婦や家族をめぐる問題は,社会の変化に伴い,多様な意見があるところですので,最高裁判所も難しい判断を迫られることになるでしょう。
最高裁判所の判断に注目しましょう。
夫婦や家族に関する法的問題でお困りでしたら,当事務所にご相談ください。
執筆者:山下江法律事務所 弁護士 田中伸