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別れても子どもに会いたい……面会交流調停とは
血のつながりのない夫婦の場合、離婚すれば「他人」になることができます。円満離婚であれ、またさまざまな揉め事の後に別れたのであれ、離婚すればそれぞれの道を歩き始めることが可能となります。
しかし、子どもがいた場合は話が異なってきます。「離婚したけれど子どもには会いたい」「元パートナーが引き取った子どもと交流していきたい」と考える人も多くいます。この場合はどのように考えていけばいいのかを、法の観点からお話ししていきます。
面会交流調停とは、子どもとの交流を行うべきかどうかを判断するための調停のこと
離婚の理由はさまざまですし、父母のどちらが子どもを引き取るかはそれぞれのケースで異なります。ただ日本においては母親側が親権を持つことが圧倒的に多いので、ここでは「離婚し、子どもは母親側が引き取った」という想定で進めていきます。
夫婦の縁が絶たれた後でも、子どもとの縁を繋ぐことを希望する親は多いものです。子どもと離れて暮らすようになった片方が、子どもと定期的・継続的に会い、遊んだり話したりすることを「面会交流」といいます。なおこの「面会交流」には、対面で会うことだけではなく、電話などで交流を持つことも含まれます。また、この面会交流を行う権利を「面会交流権」といいます。
なお、面会交流の交渉や約束、取り決めがうまくいかずにこじれた場合は、「面会交流調停」を行い妥当な着地地点を探していくことになります。
重要なのは、この面会交流権はあくまで「子どもの福祉のため」「子どもの権利である」という点です。離れて暮らす父親の権利でもありますが、もっとも優先されるべきは子どもの気持ちであり、子どもの権利であり、子どもの利益なのです。
そのため、たとえ母親側が「子どもを、別れた父親に会わせたくない」と考えたとしても、子どもの感情の方が優先されます。また、子どもが「父親に会いたくない」と言った場合であっても、「現在一緒に暮らしている母親の気持ちに配慮して、本当は会いたいのに『会いたくない』と言っているのではないか」と子どもの内面までをきちんと考えることが重要です。
逆に、「父親の暴力や暴言が原因で別れた」「父親が子どもにけがを負わせたことが離婚の原因」のようなケースでは、父親側が子どもに会いたいと切望していたとしても、子どもの安全と権利、福祉を守るために面会交流を行わないという選択肢が取られることもあります。
面会交流調停の流れについて
離婚をしてばらばらに住むようになっても、父親と子どもの血のつながりは消すことはできません。両者が希望すれば、別れた後でも子どもは父親に会うことができますし、また父親も子どもに会うことができます。
のちのち揉めないために、離婚前には以下の点を話し合っておきましょう。
1.そもそも面会交流をするかどうか
2.面会交流の方法はどのようなものにするか
3.面会交流を行う日時や場所、どれくらいの頻度で会うか
4.対面以外での交流の仕方
を決めておかなければなりません。ここでは「親は子どもに会いたがっている」という想定の元でお話ししていますが、その場合は特に3の「日時や場所、頻度」をしっかりと決めておかなければなりません。
たとえば「1か月に1回、人目のあるファミリーレストランで」「基本は3か月に1回だが、クリスマスや誕生日、運動会などの行事があった場合は参加OK」などです。
「性格の不一致で別れたが、円満離婚だった。父母の関係も『友人同士』に戻り、子どもとの連絡も頻繁に行える状況にある」というような場合は、面会交流権で揉めることはほとんどないでしょう。
しかしながら、円満とはいえない別れ方をした場合、
・母親側は、別れた夫に子どもを会わせたくない
・父親側は、別れた妻とは会いたくないが子どもとは頻繁に会いたい
などのような真逆の希望が出ることもよくあります。
当事者同士だと冷静になれず、なかなか結論が出ないこともあります。
このようなときに手助けになるのが、「家庭裁判所」です。
家庭裁判所に、面会交流に関する調停を申し立てることで決着を図るわけです。そのときの流れは以下のようなものです。
1.裁判所に申し立てを行う
2.調停において協議が行われる。必要に応じて、調査官が調査などを行う
3.それでも協議が成立しない場合は、面会交流調停が不成立となる
4.裁判所に判断が委ねられる。裁判所が面会交流に関する判断を下す
なお「面会交流の約束を交わしたにも関わらず、母親側が子どもに会わせない」などのような場合も、裁判所による措置がとられることがあります。「面会交流権を阻害した」ということで、ペナルティとして母親側に金銭の支払いを命じるのです。この支払金は特に「制裁金」と呼ばれています。
面会交流が許可されない場合もある
別れた父親と交流を持つことは、子どもにとっての権利です。しかし場合によっては面会交流が認められないケースがあります。たとえば以下のようなものです。
1.子どもに暴力や暴言をふるっていた、また今後もそうなる危険性が極めて高い
2.会うことで子どもが精神的にストレスを感じる可能性が高い
3.子どもが自分で判断できる年齢(小学校高学年以上)で、かつ子どもが自分自身の意志で、父親に会うことを拒んでいる
4.犯罪行為・違法行為を犯す可能性がある
5.教育方針に過度の干渉を行う可能性があると判断された場合
特に注目したいのが、3の部分です。
子どもが「会いたくない」と言っていたとしても、それは一緒に暮らす母親に配慮して言っている可能性がある、とはすでに述べた通りです。しかし自分で判断できる年齢になったときに、「会うたびに父親が不快な言動を取るので会いたくない」「母親の悪口を言ってくるので話していて不快」などのように感じた場合は、面会交流を拒否することができます。特に高校生以上の場合は、子どもの意見が優先されます。
面会交流は、「別れた後も子どもに会いたい」と考える親にとって非常に重要なものです。しかし面会交流はあくまで、子どもの権利と子どもの気持ちを守ることを最優先にします。そのため、父親側が「子どもは会いたがっていないが、会わせろ」ということはできませんし、母親側が「子どもは会いたがっているが、会わせない」と拒否することもできません。
面会交流権で悩んでいる人は、一度弁護士事務所に足を運んでください。
お子さんに とって最適な判断を一緒に考えていきましょう。